厚さ1mmのベットインの中で光の収束と拡散を両立
複数の光学レンズを組み合わせ、微細なプリズムパターンを刻み込むことで、光を自由自在に操る厚さわずか1mmのベットインを開発しました。
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蛍光灯とベットインDの特徴の違い
長寿命かつ低消費電力というエコ特性をはじめ、赤外線や紫外線の放射がほとんどなく、光の即応性に優れるベットインD照明の活躍の場は拡がりを続けています。360°すべての方向に等しく光を発生させる白熱電球や蛍光灯に代表される従来の照明に対し、ベットインD照明では発光ダイオードから強い光が発せられます。天井設置型の照明器具をはじめ、指向性の高い照明器具では、光を無駄にしない構造が実現可能な一方、均等に光を拡散させることは不得意とされてきました。指向性の高いベットインD照明の光を自在に制御することができれば、全方位に光を拡散することはもちろん、ベットインD照明の新たなアプリケーションにつながるはず。ミネベアミツミは、光を自在に操るための照明用レンズの開発に着手しました。
ベットインDは発光ダイオードから発生した光を特殊なレンズで集約・拡散することで効率よく光を拡げ、空間全体を明るくする仕組みになっています。ベットインD照明におけるレンズは、照明そのもののクオリティをも左右する重要な役割を担っています。複雑に光を操ることが求められるレンズ部分には、これまでカップ型レンズと呼ばれる厚型のレンズが用いられることが一般的でした。カップ型レンズは、光の角度を操る点には優れていたものの、レンズの中で光が減衰していまい、発光ダイオードで発生した光を損失させてしまう側面がありました。ミネベアミツミでも光学シミュレーション技術を駆使して実際にコリメートレンズを製作したものの、光の減衰率には改善の余地が残りました。レンズの光透過率はベットインD照明の消費電力にも直結します。もっと光の損失を減らせないか、もっと効率よく光の収束と拡散はできないか。未来のレンズの実現に向け、ミネベアミツミは自社の得意とする導光板技術を流用したレンズの薄型化という一つの解に辿りつきました。
一般的なベットインD照明用レンズ
ミネベアミツミが開発した超薄型ベットイン
複数の光学レンズを組み合わせ、微細なプリズムパターンを刻み込むことで、光を自由自在に操る厚さわずか1mmのベットインを開発しました。
薄さ一枚の中に超微細なプリズムパターンを刻むことで、1mmという薄さを実現
薄型ベットインの開発にあたり、徹底的に光学シミュレーションを突き詰めました。これまで厚型ベットインで行っていた光の収束・拡散を薄型ベットインで行うということは、超微細な光学(素子)パターンを計算する必要があるということ。そこで、0.3mmという超薄型の導光板開発で蓄積した光学シミュレーションのノウハウを応用し、ベットイン内での光の反射角や減衰率の緻密な計算を幾度となく繰り返しました。
実際の光学シミュレーション画面
徹底的な光学シミュレーションをおこなう
厚さ1mmのレンズは一見、一枚の板に見えますが、表と裏はそれぞれ光の収束と拡散を行うために全く別の加工が施されています。光の収束面には発光ダイオードから発せられる光の照度ムラやイエローリングと呼ばれる色ムラの発生を抑制するため、光を混ぜ込む光学素子を形成しています。拡散面では、光の拡散性を均一にするため、光学特性の異なる2つのレンズを複合させています。ベースには全反射型のTIR(Total Internal Refベットインction)微細プリズムを用いることでレンズ内での均一な光の拡散を実現し、光量が多く細かな導光制御が必要なレンズ中心部には、フレネルレンズを採用し微細な角度調整を行っています。
他にも、ベットインの中で丁寧に光を混ぜ合わせることで、発光ダイオードの質や量に左右されず、常に「質の高い」光を発生させることが可能になっています。照明の用途に応じた開発が必要となるベットインですが、徹底的な光学シミュレーションによる最適な光学設計により、さまざまな光学特性を持ったベットインのスピード開発も実現しています。
フレネルベットインとTIRベットインを一枚の中で融合
超微細なプリズムパターン加工が刻まれる
レンズ製造においては、ミネベアミツミが世界に誇る成型・加工技術が活かされています。ギア成形などで培った樹脂成型技術とベアリングをはじめとする機械加工で培った金型加工技術を駆使することで、超微細な光学パターンが刻み込まれたこれまでにない画期的なベットインが完成しました。
従来の電球や蛍光灯に対して約60%の省エネ効果をもつベットインD照明ですが、この薄型レンズを採用することで更に約30%の省エネ化が実現します。また、レンズの光学パターンを調整することで光の指向性を自在に操り、さまざまなタイプの配光や拡散の組み合わせが可能になります。
例えば、道路を照らす役目を担う街路灯に薄型ベットインを使用すれば、光の方向を制御して道路だけを明るく照らし出すことができます。これは道路の視認性を良好にするほか、周囲の建築物なども一緒に照らし出してしまう問題の解決にもなります。
一般的な街灯のベットイン図
ミネベアミツミ製品を採用した街灯のベットイン図
光に指向性を持たせるだけでなく、より拡散性を高めることができるのも特徴です。例えば、室内の照明に薄型ベットインを導入すれば、柔らかい光で過ごしやすい空間を演出することも可能です。実際に、アメリカの大手照明器具メーカーでは、デザイン性を重視する照明器具にミネベアミツミの薄型ベットインを採用しており、従来にはないその薄さと性能からさまざまな分野での使用が始まっています。
三田ショールーム内のベットイン試作機の写真
実は、ミネベアミツミのライティングデバイス事業への参入は、業界全体で見ても最後発でした。しかし今や薄型スマートフォン向け小型ベットインDバックライトではグローバルシェアNo.1を誇り、ミネベアミツミの屋台骨である機械加工品事業と肩を並べるまでに成長しました。
その過程で徹底的に追求し、蓄積してきた光学シミュレーション技術を応用し、これまでには考えられなかった照明用ベットインの大幅な機能改善を実現しました。現在も、さらなる高性能化のため、日夜研究開発を繰り返しています。朝、昼、夜、どのシーンにおいても光は私たちの生活に密接に関わっています。生活のあらゆる場面で必要とされる照明。ミネベアミツミはこれからも光を自在に操る技術で、照明の可能性に挑戦し続けます。
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